2010年12月11日、ソウル。私の「メロディー」が現れた日
2010年12月11日のことは、今でも昨日のことのように思い出せます。 当時、私はソウルの新村(シンチョン)で日本語教師として働いていました。そのころの私には辛いこともいっぱいありましたが、小さな部屋で私を支えてくれていたのは、いつもキム・ドンリュルさんの歌声でした。
そんなある日のこと。ジャズピアニストの上原ひろみさんのソウル公演があると聞き、友人の神父さんと一緒に会場へ向かいました。上原さんとドンリュルさんがバークリー留学時代からの友人であることは知っていましたが、まさかあんな奇跡が待っているとは思いもしませんでした。
コンサートホールのロビー。人混みの中ですれ違った一人の男性が、ドンリュルさんだと気づいた瞬間、私の心臓は跳ね上がりました。
私はとっさに「わたしは日本人です!」と韓国語で彼を呼び止めました。 「あなたの歌があったから、私は今、ソウルにいるんです」 「『メロディー』という曲にある『この世界の誰かが……』という一節の<誰か>は、まさに私のことなんです!」
実は、もしも偶然出会えたらこう伝えようと、心の中にしまっておいた言葉でした。 ドンリュルさんは突然のことに驚いた様子でしたが、マネージャーらしき人に促され、少しはにかんだような笑顔で、日本語で「ありがとゥ」と返してくれました。
私は胸がいっぱいで、そのままその場を立ち去りました。 握手も、写真も、サインもお願いできませんでした。周りの人が騒ぎ出して、彼を困らせてはいけないと思ったからです。その間、一緒に来ていた神父さんは、少し離れた場所から私たちのやり取りを優しく見守っていてくれました。
今でも『メロディー』という曲を聴くたびに、あの日の光景が蘇ります。 少し戸惑ったような瞳、綺麗に揃った二つの前歯、そして、かすかに浮かべてくれた柔らかな微笑み。
あの一瞬のやり取りは、私にとって何物にも代えがたい宝物になりました。

コメント